僕は

 ロッカーを開けた。300円はやっぱり戻ってこなかった。クソ野郎め。はやくロッカー屋さんになりたい。外に出ると、空は真っ黒い色をしていた。品川キラキラロードが目に入る。カップルが歩いているのが見えた。イルカさんの電飾に照らされ、暗闇の中で青白く浮かびあがっている。カップルは僕たちの方を見て、にやにや笑っていた。汚いものでも見るような目つきだった。実際、僕らのうちの大部分は汚いから、その目つきは正解なのかもしれない。でも僕は思った、「お前らのその目つきほど汚くはないぜ」って。僕はカップルをにらみつけ、追跡した。じゅうぶんに近づくと、奴らの背中に向かって2度、3度、傘を突き出した。それは残念ながら空振りに終わったけれど、とにかくやってやった。お前らはこの品川イルカキンピカロード?をいちゃいちゃしながら歩いてけっこう幸せなのかもしれない。だけど僕はいま、お前らよりもっとずっと幸せなんだ、ざまあみろ。梨華ちゃんと会えて、心からハッピーな気持ちでいるんだ。僕はつぶやく、「ねえ梨華ちゃん、この道、きれいだよ。イルカさん、かわいいよ。ああでも、梨華ちゃんのほうがはるかに綺麗だしかわいいよ」「ねえ梨華ちゃん、そこのカフェ、なかなかおしゃれだね」「ねえ梨華ちゃん、好きだよ。また会いたいな」と。